1RMとは?計算方法と推定値の使い方
1RM(One Repetition Maximum)とは、1回だけ挙げられる最大重量のことです。実測しなくても、扱った重量と回数から推定値を計算できます。このページの計算機は Epley 式で推定1RMを算出し、2〜12回で扱える重量の目安もあわせて表示します。
1RM(最大挙上重量)とは
「1RM(One Repetition Maximum)」とは、1回だけ持ち上げられる最大重量のことです。筋力レベルを数値化する指標として広く使われ、記録の比較や成長の確認に活用されます。
1RMは「その種目で正しいフォームで1回だけ挙げられる限界の重量」を意味します。実測には大きな負荷がかかるため、多くの場合は計算式による推定値が使われます。推定に必要なのは、扱った重量と、その重量で何回挙げられたかというセット・レップの記録だけです。
1RM計算機
挙げた重量と回数を入力すると、推定1RMと、2〜12回それぞれで扱える重量の目安を表示します。ボタンを押す必要はありません。単位はkgです。
この計算機は Epley 式を使っています。
表示されるのは推定値です。実際に挙げられる重量とは異なります。推定値は多数の測定データから導かれた平均的な傾向をもとにしたもので、同じ数字を入力しても当てはまり方には個人差があります。
1RMの計算式
推定1RMの計算式はいくつもありますが、よく目にするのは次の2つです。どちらも、扱った重量と回数の2つだけから推定値を出します。
Epley式(エプリー式)
1RM = 重量 × (1 + 回数 / 30)
例:60kg × 10回 → 60 × (1 + 10/30) = 80.0kg
Brzycki式(ブリツキー式)
1RM = 重量 × 36 / (37 − 回数)
例:60kg × 10回 → 60 × 36 / 27 = 80.0kg
Epley式は、多くの1RM計算ツールで既定の式として使われています。推定1RMという言葉が出てきたときに参照される機会が最も多い式です。
ただし、広く使われていることと精度が高いことは別です。1997年に LeSuer らがベンチプレス・スクワット・デッドリフトで各式を比較した研究では、ベンチプレスにおいて誤差が最も小さかったのは Mayhew 式と Wathen 式でした。
このページが Epley 式を採用しているのは、式の形が単純で、読者が自分で計算の過程を追えるためです。重量に (1 + 回数/30) を掛けるだけなので、表示された数字がどこから出てきたのかを手元で確かめられます。
同じ重量・回数を2つの式に入れると、結果は次のようになります。
2つの式は、10回のときだけ結果が一致します。10回より少ないと Brzycki 式のほうが低い値を出し、10回を超えると逆に高くなります。
15回で差が急に開くのは Brzycki 式の構造によるものです。分母が「37 − 回数」なので、回数が増えるほど分母が小さくなり、値が跳ね上がります。回数が多いところでは、どの式を使うかによって推定値が大きく変わります。
1RMの推定式はどこから来たのか
推定式としてよく引用されるものは、7つほどあります。Epley(1985年)、Lander(1985年)、Lombardi(1989年)、O'Conner ら(1989年)、Mayhew ら(1992年)、Brzycki(1993年)、Wathen(1994年)です。名前の多くは考案者の姓から取られています。
このうち Epley 式は、研究論文ではなく、ネブラスカ大学の選手向けトレーニング教本に掲載された重量早見表が出典です。表から式が逆算されて広まった経緯があり、実証的な導出過程の記録は残っていません。式そのものより先に、現場で使う表があったということになります。
考案者のボイド・エプリーは、1969年にネブラスカ大学に採用された、大学スポーツで初の専任ストレングスコーチです。1978年には NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)を設立しています。
Brzycki 式も似た成り立ちで、1993年に体育系の実務誌に掲載された記事で提案されたものです。標本や手法を伴う正式な研究ではなく、コーチ向けの実用ツールとして示されました。
まとまった規模の標本から導かれた最初期の式のひとつが、Mayhew ら(1992年)です。男性184名・女性251名の計435名の大学生をベンチプレスで測定し、指数モデルを当てはめています。そして1997年に LeSuer らがベンチプレス・スクワット・デッドリフトで各式の精度を比較し、以降の比較研究の基準として引用されるようになりました。
現場の早見表として始まったものに、後から研究が追いついてきた、という流れです。読者にとっての意味は単純で、どの式も絶対的な正解ではなく、あくまで目安だということになります。
重量だけでは分からない変化を見る
重量だけを見ていると、回数が変わったときに伸びているかどうかが分かりません。推定1RMは重量と回数をひとつの数字にまとめるため、条件が違う記録どうしを比べられます。
例1:重量は変わらず回数が増えた場合
例2:重量が上がって回数が減った場合
2つの例で、指標ごとの動き方は次のようになっています。
- 重量は例2が10kg増えている。例1は変わっていない
- 推定1RMの伸びは例1のほうが大きい(10.0kg増)。例2は4.0kg増
- 総ボリュームは例1が増加(300kg → 600kg)、例2は減少(600kg → 420kg)
- どの指標を見るかによって、変化の見え方が変わる
総ボリュームは、重量 × 回数(× セット数)で求める、その日にこなした総量です。指標としての詳しい説明はボリュームにまとめています。
重量の数字だけを追っていると、前回と同じ重量だった日は変化がなかったように見えます。同じ重量でも回数が増えていれば、推定1RMは上がります。変化の表れ方は重量だけではない、ということです。
推定1RMが分かると、逆に回数ごとの重量の目安を計算できます。計算機の下に出る表がその一覧で、推定1RMを (1 + 回数/30) で割った値を2回から12回まで並べたものです。1回のときの推定重量は推定1RMそのものになるため、表は2回から始めています。右端の割合は、推定1RMに対して何%にあたるかを示しています。
この表の役割は、条件の違う記録を同じ土俵に置き直すことです。以前に8回で扱っていた重量と、いまの推定1RMから逆算した8回相当の重量を並べれば、回数を揃えた形で比べられます。記録を比べるための換算表であって、次に扱う重量を決めるための表ではありません。
推定値と実測値がずれる理由
推定式は、多数の測定データから導かれた平均的な傾向を数式にしたものです。平均に対して個人がどれだけ離れているかは人によって違うため、推定値と実際に挙がる重量は一致しないことがあります。
回数が多くなるほど、誤差は広がる傾向があります。1回に近い重量からの推定は外挿の幅が小さく済みますが、15回挙がる重量から1回分を推し量ろうとすると、間を大きく飛ばすことになります。計算機で13回以上を入力したときに注記が出るのはこのためです。
種目によっても当てはまり方は変わります。多くの推定式はベンチプレスの測定をもとに検証されており、他の種目に同じ式をそのまま当てはめた場合、ずれ方が変わることがあります。
実測しなくても強度の手がかりを残しておく方法として、セットごとのきつさを1〜10で記録するRPEという指標もあります。推定1RMが重量と回数から計算される数字であるのに対して、RPEはその日の感覚を記録するものなので、性質が違います。
1RMの変化を追うには
先ほどの例1(60kg × 5回 → 60kg × 10回)のような比較は、前の記録が残っていて初めてできます。以前どの重量で何回挙げていたかが分からなければ、推定1RMを計算する材料そのものがありません。
記憶に頼っていると、重量はなんとなく覚えていても回数までは出てきません。推定1RMは重量と回数の両方が揃って初めて計算できる数字なので、片方だけでは比べようがないということになります。何を書き残しておけば足りるかは筋トレの記録には何を書けばいいのかで整理しています。
アンドトレーニングでは、種目ごとの最高重量や推定1RMを、分析画面で種目を選んで詳細を開くと確認できます。分析画面の見方はグラフの見方にまとめています。分析画面とセット入力画面のどちらでも、このページと同じ Epley 式による推定1RMが表示されます。なお、時間で記録する種目は推定1RMの対象外です。
過去の記録はカレンダーから日付ごとに開けて、重量・回数の編集もできます。入力を間違えたまま残しておくと推定値も変わってしまうので、直せる状態にしておくと安心です。
扱う重量を少しずつ増やしていくという考え方は漸進性過負荷と呼ばれます。推定1RMはその変化を1つの数字で追うための指標のひとつです。数字をどの間隔で見返すかについては記録を振り返る習慣で扱っています。
